ーやわらかいデ・ステイルー
中庸な形態と質量による本棚の提案。
引っ越したての伴侶は段ボールを積み上げ、さらにその段ボールの上に出した荷物を積んでいった。そこには段ボールが荷物の入れ物でありテーブルでもある、多義的と言ってよい感覚と、ルールがあって不自由だからこそルールを再解釈するような自由さがあった。
高さの異なる本棚を2セット計8つを並べ、時には積んで形態を真似ることにより多義的段ボールの再現を試みた。材料は段ボールのラフな肌理を思わせ、コストの抑えも兼ねたOSBを選定した。
OSBをデ・ステイルの配色を用いた表面処理(ファクチャー)とした。
形態において、本棚という不自由な箱とその天板の自由なテーブルが共依存しているように、OSBを形式の強いデ・ステイルカラーで塗ったのなら、質量側も不自由と自由が共依存できるのではないか。この状態の質量と形態が組み合わさることを狙った。
OSBの肌理のラフさで塗装が乗り切らず、面色もエッジもぼやけたデ・ステイルとなる。
つまり材料の特徴的な肌理により、デ・ステイルの強い形式が綻んだ。そして形式により材料の強い肌理も綻んだ。
中庸な形態と質量、柔らかいデ・ステイルは、どことなく絵本のミッフィーを感じさせる。
クライアント: 夫婦
場所: 某所
完成時期: 2019.08
製作会社: N.Style
塗装・撮影: Lenz Design